刃物・工具いろいろ
人は古くから鉄を利用して様々な道具を作り続けています。身の回りの道具は、切る、
削る、挽く、打つ、叩く、砕く、割る、孔ける、塗る、混ぜる、等、生活のなかで様々な使
われ方をしています。能率が高く、使い勝手が良い様々な道具が作られています。

より詳しく、DVDに収録   (刃物工具いろいろ編:映像・音声入り)

刃物や道具の”良し悪し”とは何を物差しに言っている
のでしょうか。
”良い”と感じるときは使ったときの”できばえの良さ”と、
それが長く続く時、最高の満足感が得られます。反対に、
”悪い”と感じるときは期待したほどの成果を得られなか
ったときです。

使う前の期待と使い終えたあとの実感とのギャップの大
きさを”良し悪し”の判断材料にしているような気がします。

刃物にとっての”良さ”とは最初の切れ味がすばらしく、
その切れ味が長く続く品物ということになると思います。

最初は良くてもすぐにダメになるのでは使いものになり
ませんから、切れ味の良さが長く続く永切れ(ながぎれ)
する刃物が一般的に性能が良いということになります。
しかし、この”良い刃物”は外見だけでは見分けがつきに
くいものです。使ってみて始めてその良さや悪さが分か
ることになります。

メーカーにとっては、あの人の、或いはあのメーカの品物
なら大丈夫との信頼を勝ち得たいものです。

しかし、信頼は長い時間の中で築かれるところがあります
ので、日々の努力を怠っていてはユーザーの心を射止め
愛される商品づくりはできないに違いありません。

刃物の作り手は、このように使い手に信頼される商品づくり
に日々励んでおられるのだと思います。

いろいろな刃物と相手材との関係を見つめるとき、刃物
工具と相手材との関係は、まるで人が相撲を取っている
かのようです。刃物工具(自身)が鋼材など(相手)と戦う
とき、相手より強ければ勝ち(変形させることができる)ま
すが、相手のほうが強ければ負け(摩耗や欠け、割れ)て
しまいます。

このように、刃物工具の性能は相手との力関係やその時
の状況に大きく左右されるのです。相撲の力士には押し
相撲、四つ相撲、突っ張り、投げといった独特の形をもっ
ています。

刃物工具も同じです。相手の力士の格や力量(硬軟、強
弱など)に対し、押す、引く、組む、突っ張りといった作戦
の立て方次第で結果は大きく違ってくるものです。

相撲は人と人、体と体のぶつかり合いで、投げ飛ばされ
ても体にはそれほどのダメージはありませんが、刃物と
なると勝手が違います。相手が木であったり金属であっ
たり、石であったり様々です。

刃物が相手と闘う場合、一気に勝つか、あるいは自分を
弱らせないで(摩滅を抑制して)、相手を弱らせていくか
のどちらかになります。

相撲の決まり手は48手あるそうですが、刃物の場合、
相手に攻め込まれたあげく土俵際で”うっちゃり”といっ
た逆転技はありません。刃物は相手より強くなければ
ならない。これが絶対条件といえます。





道具は人や機械の力を刃先に伝え、仕事をさせるという
シンプルな作りをしています。

ものづくりにとって、なくてはならない存在です。

刃物工具にとって、いい仕事ができるかできないかは
道具のつくり方一つで大きく異なってきます。

そのためシンプルな作りですが、力の与え方、その力を
効率良く伝える仕組み、あるいは、刃先の構造等々、
様々なものづくりの工夫が凝縮されているのです。

これが、たかが刃物、されど刃物といわれる所以です。