熱処理いろいろ
刃物は硬く、強靱にする目的で熱処理(焼き入れ)が行われます。刃物の形を作っただけでは軟らかいまま
で使いものにならないからです。ゆえに、刃物や工具にとって熱処理は避けては通れません。
熱処理は鋼を赤めて冷やす、極めて単純な作業ですが、なかなか思い通りにならないのが熱処理の難しい
ところです。

熱処理は、鋼を赤めて冷やす、極めて単純な作業です。
鋼がもつ”変態”という特有の性質を利用しています。

熱処理(焼き入れ)には一定の決まりがあり、これを忠実
に守らなければなりません。

1.熱処理前に鋼の組織の調整を行う。

2.鋼に適した加熱温度を守る。

3.品物の質量に対する加熱保持時間を守る

4.冷却媒体(水や油)の温度管理と循環を行う

5.引き上げるタイミングをはかる。

6.必要によっては深冷処理(サブゼロ)を行う。

7.焼き戻しは焼き入れ後すぐに行う。

以上が熱処理を行う際の一連の流れであり、決まりです。

刃物工具の場合、局部的に硬くするか、あるいは全体を
硬くするかの2つの方法に分かれます。

局部的に硬くするには火炎バーナーや高周波、塩・鉛バス
といった加熱方法がとられます。

全体を硬くするにはコンベア方式の連続炉やバッチ式の
熱処理炉が利用されます。

いずれも炉内にアルゴンなどの不活性ガスを流し、品物
の表面に酸化スケールが出ないようにします。

真空熱処理は、炉内を完全密封して、一定の真空レベル
の減圧状態にして加熱する方法です。
できあがりは炉に入れる前より綺麗になることもあり光輝
熱処理とも呼ばれています。



焼き入れ作業の基本手順

@熱処理前の鋼の調整(焼き鈍しなど)を行う。

A鋼の変態温度プラス50℃に徐々に赤めていく。

A温度に到達すると、(30min/1inch厚)を目安に保持する。

B十分に赤まったところで、取り出し、素早く冷却させる。
  ※水や油のなかに投入、品物が黒ずく温度で引き上げる。

注意すべき点
※結晶粒の粗大化を防ぐため焼き入れ温度は高くし過ぎない。
※同じく保持時間も適正に、長くし過ぎない。
※冷却は最初は速く、あとはゆっくり冷やす。






より詳しくは DVD に収録    (熱処理編:映像・音声入り)

鋼の焼入れは、加熱温度が適正であっても冷却方法を誤れ
ば十分な硬さが得られないとか、反対に焼き割れなどの重大
な結果に繋がります。

品物を如何にして冷やすか、この冷却の問題こそ、熱処理の
良し悪しを決定づけているといえます。

鋼の材質ごとに適正な冷却速度があり、これを守らなければ
不完全な焼き入れとなってしまうからです。

冷却速度は品物の大きさによって変わります。品物が大きけ
れば冷却速度は落ち、小さければ速くなります。
これを質量効果といいます。

鋼の冷やし方の違いで内部の組織は様々に変化しますので、
得たい組織によって冷却方法を工夫することになります。



鋼の焼入れ温度は、鋼の種類毎に決められています。

含まれている炭素や合金元素の種類など、成分の種類
や量の違いで焼入れ温度は異なってきます。

ここで、焼入れには一つの絶対条件があります。

焼き入れは鋼がもつ”変態”という特別の性質を利用して
いるため、変態点を超える温度以上に加熱しないと、焼き
が入りません。これが絶対条件です。

一般的に、鋼の焼き入れ温度はこの変態点プラス50℃
の温度が良いとされています。

変態点以下の温度にいくら長時間加熱しても焼きが入り
ません。また反対に温度が高すぎると内部の結晶が粗大
化してしまい、脆くなる原因となります。

鋼材毎に焼き入れ温度は一定の範囲が決められています
ので、この温度から大きく外れて熱処理を行うことはよくあり
ません。

むしろ、忠実に守ることが焼き入れを失敗しないコツではな
いでしょうか。